1月定例会レポート-「積極防衛への転換 - 外交評論家 加瀬英明先生」

昨年11月末、航空自衛隊の三沢基地にF35の配備が始まると報道されました。今のF15を改装し、空対地ミサイルと長距離巡航ミサイルも装備するということです。さらに、12月に入ると、今度は、ヘリコプター搭載型護衛艦出雲を、F35B戦闘機が離発着できるように改装することが報道されました。

これは、敵の基地も攻撃することが出来るようになるということで、専守防衛を巡って大きな問題になるだろうと思います。政府は、専守防衛の中の積極防衛であり、憲法違反はないと言っています。とにかく、日本が初めて敵基地への攻撃能力を持つということでは、画期的なことだと思います。

今年は明治維新150周年になります。坂本龍馬は「日本を洗濯いたしたく候」と言いましたが、安倍政権には、戦後の総理の中で最高の洗濯屋になって欲しいと思います。

中東混乱が東アジアに及ぼす影響

これも同じく昨年の11月のことですが、中東のサウジアラビアで衝撃的なことが起こりました。サルマン皇太子が、ライバルのプリンスたちを2、30人逮捕し、ホテルに拘留監禁したのです。

サルマン皇太子は何をしたいのか。サウジアラビアの人口は、40年前には600万人で現在は3000万人ぐらいです。人口はどんどん増えていくのに、石油埋蔵量は増えない。しかも、原油価格が大きく落ちてしまった。そこでサルマン皇太子は、2030年までに脱・石油経済の近代国家にしようという目標を掲げ、大改革を進めつつあるのです。

女性の車の運転やスポーツ観戦を認める。あるいは、女性はサドルを着用しなくてもよい、クラッシック音楽ですら禁止していたのを、それも許可する。そうやって近代国家に変えていくというのです。

しかし、私はこの改革は成功しないだろうと思います。サウジアラビアはイスラム国の中でもっとも戒律が厳しい国です。急な改革をやって、果たして保守派は黙っているでしょうか。

イスラム圏では改革や大きな変化をもたらそうとすると、必ず大混乱になります。私は、4年以内にアラビア半島が混乱に陥る可能性があると思っています。そうなると、石油天然ガスの80%をペルシャ湾に頼っている日本は、重大なエネルギー危機に直面することになります。

さらに、中東が大混乱に陥ると、アメリカ軍は、そちらに展開することになると思います。10年ぐらい前からアメリカは、中東と東アジアの両方を守るだけの軍事力はないと認めています。そうすると、中東の方が大切ですから、東アジアにいるアメリカ軍は、向こうに回ることになります。すなわち、日本はまる裸になって、北朝鮮に対しても何もできない事態になるということです。

本当の脅威は中国

北朝鮮は日本を侮って、経済的排他水域にミサイルを着弾させました。日本列島をミサイルの試し打ちの場に使っています。しかし、私は北朝鮮は本当の意味の脅威ではないと思っています。

一番の脅威はやはり中華人民共和国です。中国が尖閣を盗りに来た場合、アメリカ軍は、中東に移動していない今日の状態でも、動くことはないと思います。私は以前から、中国の狙いは沖縄まで盗ること、そして最後には日本を属国にすることだと言ってきました。中国はアメリカとの全面戦争の能力はありません。しかし、アメリカも中国との全面戦争はやりたくない。ですから、中国が尖閣に出てきた場合、アメリカが全面戦争をかけてまで守ることはありません。同盟関係は平時には抑止力として役に立ちますが、有事の際には頼りにならないのです。

中国、北朝鮮の軍事的脅威と、米軍の抑止力の低下で、東アジアは無秩序状態になろうとしています。

東アジア混乱の最大要因は日本国憲法

そして、この東アジアの無秩序をさらに加速させている最大の原因が、日本国憲法です。仮に日本が独立を回復したのち、マッカーサー憲法を改めて、せめて日本のGDPの半分しかないイギリスかフランス並みの国防力を整備していれば、北朝鮮も中国も、こんなに日本を侮ることはなかったでしょう。ですから、日本国憲法はアジア諸国に大変な迷惑を及ぼしています。

立憲民主党の枝野さんなどは、「専守防衛」と口にしますが、専守防衛とは、敵の軍隊やミサイルが、日本の領土、領空に入ってくるまで反撃できないということです。

私が日本安全研究所の理事長を務めていたとき、アメリカ国防省から戦車の専門家が3人来て、一緒に陸上自衛隊の富士演習場に行ったことがあります。そこに戦車砲のシュミレータがあったのですが、戦闘場面は日本の農村なのです。そこに敵の戦車が入ってきて戦うのですが、それを見て私は専守防衛というのはひどいと思いました。

つまり、専守防衛というのは、本土決戦なのです。専守防衛を口にする枝野さんたちは、日本が本土決戦を戦わなかったことを悔いているのではないでしょうか。しかし、本土決戦になっていたら、日本民族は絶滅していたかもしれません。ですから、専守防衛を主張する枝野さんの立憲民主党は、日本を滅ぼすことになると思います。

軍の規定は憲法に書く必要はない

先週、ケント・ギルバートさんと憲法についての対談本を出すということで、話をしてきました。第九条をどうするかということについて、ケントさんは、完全に削除すればいいと言われるのです。アメリカ合衆国憲法には、軍を持つなどということは全く書いていない、独立国として当然のことを憲法に書く必要はない、と言われる。そして、軍隊については、アメリカのように法律で定めればいいのですよ、と言われるのです。

このケントさんの指摘を聞いて、目から鱗がはがれるような気がしました。確かに、警察、消防、郵便など、持つことが当たり前なことは憲法には書いていません。ですから、本当は、九条に自衛隊を書き込むというよりも、九条そのものを削除してしまったほうがすっきりするのだと思います。

破滅か再生か、九条改正の成否

日本国憲法は国民によって承認されたことは一度もありません。今、九条の改正が提起されようとしていますが、万一、国民投票に負けるようなことがあれば、日本は極めて危ないと思います。

中国は全てが政治です。政治以外何もない国です。そういう危険な国が日本の隣にいます。中東の状況がおかしくなって、アメリカ軍が向こうに行ったら、我々は無抵抗状態になります。

政府も、出雲を空母に改装しようとか、積極防衛に切り替えようとしています。日本が生まれ変わろうとする機運もあります。とにかく、憲法を改めなければなりません。これが日本の生き残る道です。

(講演要旨 文責・編集部)